ra*ka

勢いの無さに定評のある似非文芸ブログ。

ひのさか2#03

Posted 茅野らほい / 2008.02.17 Sunday / 23:41

「じゃあ、ふたりとも中学違うんだ」
「ですね。あたしと柚季ちゃんが同じクラスになって、そいで」
 テーブル越しに、ふたりの一年生。千佳子ちゃんと柚季ちゃん――元気なほうが千佳子ちゃん、って覚えとけばいいのか。
 隣の柚季ちゃんに目を移すと、彼女は何か言いたげにこちらを見ている。わたしの視線に気付いたらしく、少し驚いたのか肩を揺らす。首をかしげて返すと、柚季ちゃんは思い切ったように口を開いた。
「先輩、は三中ですよね」
「うん、そうだけど……わたし言ったっけ?」
「わたしも、同じなんです。三中の、三年三組でした」
 ……分かるわきゃないな。わたしが通っていたのはいちばん人口密度が高い地区の中学校だ。部活とかの繋がりがないと、そうそう目立つ子でもない限り記憶に残らない。しかしクラスまで同じとは、ね。
「そっかー。でも、よく覚えてたね。わたし空気キャラだったのに」
「そんなこと、ないです。先輩すっごいかわいかったし、それに」
 こりゃまた過大な評価だな。どこまで釣りなんだか……。
「あ、柚季ちゃんの言ってた先輩って、水崎先輩だったの?」
 千佳子ちゃんの言葉に、こくりと頷く柚季ちゃん。顔真っ赤だぞ……。
「それに?」
「あ、いえ、何でもないです……」
 変な子だ。
 彼女はそれきりうつむいて黙り込んでしまった。しぃん、という音が聞こえたような気さえする。結局、その沈黙を破ったのは当の柚季ちゃんだった。
「えっ……と、水崎先輩は」
「あ、それそれ」
「?」
「何かね、久々に先輩って呼ばれたらすごい違和感がしちゃって。恥ずかしーな」
「でも、先輩は先輩ですし」
「うーん……さん付け辺りで、何とか」
 わたしの言葉に、柚季ちゃんはしばらく口を金魚よろしくパクパクさせていたけれど、やがて何かに納得したように頷いてわたしを見据えた。何か目がうるんでるけど見なかったことにする。
「み、ずさき……さん?」
「はいはーい」
 軽く手を振ってこたえると、彼女はまたも押し黙ってしまう。
 よしよし、とその頭を撫でている千佳子ちゃんを見ると、困ったような嬉しいような表情。
 わたしはどうしたもんかね、といった感じに笑って見せる。千佳子ちゃんも、似たような顔で肩をすくめた。

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