ra*ka

勢いの無さに定評のある似非文芸ブログ。

ひのさか2#04

Posted 茅野らほい / 2008.02.18 Monday / 00:43

 この時期になると三年生が部室にいない、というのは去年の経験から分かってはいた。しかしながら、だ。わたしが部室にいたからといって何ができるのか。
 そういう訳で、わたしは必要かどうかも分からない備品の確認を繰り返しながらお茶をすすっているのである。
 ――まるで去年の榛原さんみたい。
 部室のドアが開いたのは、三度目のチェックを始めてすぐ、筆記用具をひっくり返したときだった。
「はよざーす」
「……ああ、おはようでいいのよね」
「さすが晶さん」
 へらっと笑って、遼司くんはソファに腰掛ける。しかしホント、狙ってるのかどうか知らないけれど――、それは遼子さんとまったく同じ位置。
 わたしの視線に気付いたのか、彼は寝起きの顔をまっすぐこちらに向ける。
「見てたって何も出ないっすよ?」
「ははっ、やっぱしそっくり」
「ん? 姉ちゃんにですか」
「うん。――遠野さんそっくりだったら、わたし今ごろひっぱたいてるわ」
「ふうん、そういう関係なんすか」
「全部が全部じゃないけどね。むしろそういう関係、ってどんなのさ」
「んー、三角な何かとか?」
「……まあ、遼子さんは好きだったけど」
 その言葉に応える代わりに、彼はソファにころっと倒れ込んだ。
「あ、遼司くん」
「はい?」
「その位置ね、遼子さんならセーフだったけど、きみはアウトだな」
「晶さん、スカートちょっと短くないっすか」
「――そこまでなら許容範囲かな」
 言いながら、わたしは膝をくっつけて少しだけ脚を斜めにずらす。机越しに遼司くんを窺うと、天井を眺めて一定のリズムでソファの背を叩いていた。
「そういえば、音楽やってるんだっけ」
「下手ですけどね」
「生楽器? 打ち込み?」
「両方……かなあ。最近は家で打ち込んでるくらいです」
「へえ。ジャンルとかってどんなの?」
「全然決まってないですよ。そのときの気分で」
「生のときはやっぱしギターとか弾くの?」
「や、ベースです。だからひとりだとあんまし……ってのもあるんですけど」
 へえ、と生返事でこたえて、わたしは机に散らばっていたペンを拾い集める。変なとこは遠野さんみたいだな、と思った。喋り方というか、雰囲気がどことなく似ている。――何か、気持ち悪い。
「で、晶さんは何してるんですか?」
「ペン数えて片付けてね、そんでまたひっくり返して片付けてるの」
「生産性って何でしょうね」
「んー、でもね。こうやってどうしようもない単純作業やってるとさ、何かこう脳内麻薬みたいなのが出てくる……ような気がしない?」
「分からなくもないですけど」
「これだからやめられないんだよねー、ってこういう時に言うのかな」
「たぶん違うと思いますよ」
 言って、遼司くんは天井を向いたまま眠たそうに欠伸をした。

Comments

Comment Form





Trackbacks

Trackback URL : http://raka.hhlc.jp/sb.cgi/202

PAGE TOP