ra*ka

勢いの無さに定評のある似非文芸ブログ。

ひのさか#48「ん」

Posted 高宮かやの / 2007.07.29 Sunday / 22:38

 見上げた空は微妙な青だった。水崎ちゃん的に表現すれば「風の精霊が生あくびをしたような」といったところだろうか。そんな水崎ちゃんはといえば、お嬢様然としたお顔を真っ赤に染めて読書に夢中。何を読んでいるのかなんて、確認する必要もないな。雲なのか空なのか、いまいち判断に困る青色を眺めながら、うちは部室の窓をそっと閉めた。
 ソファでいつものように昼寝している戸波さんを起こさないよう、うちは椅子に腰掛けてテーブルに伏せてあった文庫を手に取る。隣の水崎ちゃんが時々「ふゃ」とか「くぃ」とか口走る他には、戸波さんの寝息しか聞こえない。
 もぞもぞと動く戸波さん。あ、だめだめ、見えるって。
 その瞬間、うちの左側からばたんと音がした。

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ひのさか#47「す」

Posted 高宮かやの / 2007.07.22 Sunday / 15:32

「ズルしてもいい?」
「は?」
 開口一番、藤村さんが発した言葉に、うちは語尾上がりの一文字で返答した。珍しいこともあるもので、司書室にいたのはうちらふたりだけ。
「んやね、ほらわたしにはアナタに無いものがある訳よ」
「何すかそれ」
「うーんと、真っ先に挙げるなら胸とか」
「殺意が」
 うちは笑ったまま、机に置いてあったハサミに手をかけた。藤村さんは大いに胸を張って、人差し指を立てて続ける。くそホントに胸あるなこの姉ちゃん。

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ひのさか#46「せ」

Posted 高宮かやの / 2007.07.21 Saturday / 22:20

 つまるところ翌日である。部室にはうちとゆりちゃん以外誰もいない。それもそうだ、今日は休日なのだから。とは言え、運動部やら吹奏楽やら練習にきている生徒も多い。
 うちらはさっくり紛れ込んだように校舎に入っていけた。

「……つか、超ハズかった」
「それを言うな」
「だーってさぁ」
 うちは座りながらスカートの裾をつまんで、ぱたぱた扇ぐように振りながら言った。
 ゆりちゃんはゆりちゃんで、紙束の入ったファイルで首筋に風を送っている。

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