ra*ka

勢いの無さに定評のある似非文芸ブログ。

ひのさか#10「ぬ」

Posted 高宮かやの / 2007.01.31 Wednesday / 22:14

 鍋も片付いて、おねえさん――藤村さんがお茶を運んできた。一瞬だけ不安になったが、さすがにお茶に不純物は入りようがないだろう。……鍋も普通なら入るはずがないんだけれど。わたしはカップに口をつけてみた。うん、問題ない。というより微妙に美味しい。それにしてもオレンジペコとか久々に飲んだ気がする。
 水崎さんが思い出したように口を開いた。隣にはやや居心地が悪そうに座っている男子がいる。
「それで、この子が入部希望らしいんですが」
「おうおう、物好きだね」
「そういうこと言うからマトモなひとが逃げるのよー」
 顧問らしからぬ物言いにツッコミを入れる笹本ちゃん。うちの部員がマトモじゃないって自覚はあるらしい。……いやわたしはマトモだぞ、たぶん。

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ひのさか#09「り」

Posted 高宮かやの / 2007.01.30 Tuesday / 22:56

 それにしても広い部屋だ。2LDKとはいえ、リビングだけで下手なワンルームふたつぶんはあるだろうか。だから十人近く入っても平気なんだろうけれど、これでふたり暮らしはちょっともったいない気もする。確かに個別の部屋がふたつなんだし、間違ってはいないのだけれど……何だか釈然としない。
 鍋はきわめて普通に作られ、きわめて普通にみんなの胃袋におさまった。不安がっていた三年生も――主に部長だけだが――徐々に箸を伸ばすようになっていた。

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ひのさか#08「ち」

Posted 高宮かやの / 2007.01.29 Monday / 21:31

 わたしと戸波さんが集合場所に着いた時には、もう全員揃っていた。あいちゃんに首根っこを掴まれていた部長は、もう逃げる気力も無くなったようで下を向いてブツブツと呟いていたけれど、とりあえず見なかったことにする。
 集団から少し離れてケータイをいじっていた遠野さんは、他の三年生とは違って特に嫌がっても諦めてもいないようだった。
「……遠野さん、遠野さん」
「んあ?」
「遠野さんは鍋、平気なんですか」
「いいか榛原くん、学説によれば不純物が入る前に食いだめすればよしとある。それで万事オッケーだ」
「……了解であります」

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