ra*ka

勢いの無さに定評のある似非文芸ブログ。

ひのさか#36「あ」

Posted 高宮かやの / 2007.03.31 Saturday / 22:41

「遼子さぁーん」
「どしたん?」
「あの人でなしがいじめるんですよぅ」
「あらら、可哀想に。こっちゃおいでー」
 いつも通りソファを占領していた戸波さんの隣にくっついて、わたしも腰掛ける。通称人でなしであるところの遠野さんも、いつも通り面白いんだか面白くないんだか分からない表情で向かいの椅子に座っていた。

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ひのさか#35「て」

Posted 高宮かやの / 2007.03.27 Tuesday / 23:39

「おはよございま、す……」
「――おはよ」
 ソファに座っていたその後ろ姿に、わたしはほんの少しだけ唇を歪めた。いないだろう時間帯を見計らってきたものの、その目算は見事に外れたらしい。
 戸波さんの視線はわたしに向けられることなく、手元のハードカバーを追っている。わたしはわたしで、向かいの椅子に腰掛けると鞄から同様に文庫本を取り出して開く。
 時々ページをめくる音が聞こえる他は、沈黙が続いていた。しばらくそうしていて、やがて顔を上げたのは戸波さんだった。
「晶ちゃん、今日はヒマなん?」
「……これ読み終わる程度には」
 わたしは手にしていた文庫本をひらひら振って応える。戸波さんは片眉を少し上げて、本をぱたんと閉じた。
「ちょいお散歩でも行きましょっか? さっきから肩こっちゃった」
「――いーですよ」

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ひのさか#34「え」

Posted 高宮かやの / 2007.03.22 Thursday / 02:56

 久々に入ったその部屋は――そういえば入学してからは初めてだった気がする――相変わらずシンプルな眺めだった。
「ねー、そろそろ休憩しよ」
「晶の休憩、って終了と同じ意味なんじゃないの」
「大丈夫大丈夫。とりあえずゴロゴロさせてちょ……座りっぱで疲れたぁ」
 課題を片付けるには、ふたりでやった方が都合がいい。わたしは古典、神谷っちは数学。得意分野がはっきり分かれていると、なおさらに効率がよかったりする。効率が悪いのは、わたしの膝から下だけなのだけれど。

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